市場規模の推計方法

 

■新興市場やニッチ製品の市場の規模は簡単には分からない

未知の市場への参入を検討する際、どの程度の事業機会が存在するのかを推し量るために、対象市場の市場規模を推計する必要が生じます。市場規模の推計値はインターネット上に公開されていたり、市販の市場調査レポートを購入したりすることにより入手できる場合も多いですが、東南アジアや南米諸国といった新興国の市場や新技術の登場や社会トレンドの変化により新たに創出された市場、また顧客が非常に限定されているニッチ製品の市場への参入を検討する場合は、市場規模の推計値が簡単には入手できない場合が多いです。当社が手掛ける市場規模推計業務は、上述のような推計値が簡単には入手できない市場を対象とするケースであることが殆どです。

 

■市場規模の求め方(製造業の場合)

市場規模は以下のステップで算出していきます。

 

①. 対象市場で製品を販売している企業の一覧を作る。

②. ①でリストアップされた企業それぞれに対して、対象製品の販売量を求める。

③. ①でリストアップされなかった中小・零細企業による販売量を推計する。

④. ②および③で求めた各企業の販売量を合算して市場規模を求める。

⑤. ④で求めた市場規模の正確性を検証する。

 

では、それぞれのステップごとに、具体的な手順を解説していきます。

 

①. 対象市場で製品を販売している企業の一覧を作る。

市場規模というのは、その市場に参入している企業の年間商取引量の合計値です。したがって市場規模を求めるための最初のステップは、参入企業を網羅的に洗い出すことになります。ここで注意しなければならないのは、自社で生産設備を保有していないけれども対象製品を外国より輸入して販売している企業も忘れずに洗い出すようにする点です。

企業を洗い出す方法は以下のように幾つか存在します。プロジェクトに適した方法を選びつつ、企業リストを作成していくことになります。一つの方法で企業を洗い出したらそこで終わりにしてしまうのではなく、別の方法も試してみると良いと思います。そうすることで更に新しい企業を見つけ出すことができて、企業一覧の網羅性を高めることができるからです。

 

  • 関連する業界の企業便覧を参照する。
  • 関連する業界団体への参画企業を洗い出す。
  • 関連する業界の製品見本市への参画企業を洗い出す。
  • 企業検索用のデータベースサービス[1]を利用する。
  • 大都市の大型小売店の店頭に並んでいる製品の製造・販売元を全て洗い出す。(B2C製品の場合は必須)
  • インターネット検索エンジンを活用する。
  • 電話帳から企業を洗い出す。(情報が十分に整備されていない新興国の場合に特に有効)

 

②. ①でリストアップされた企業それぞれに対して、対象製品の販売量を求める。

対象製品の販売量は、各企業とも一般に公開していることは少ないため、各企業へインタビューを実施する中で把握していくことになります。インタビューはテクニックを要するため、当社を含む専門の調査会社に依頼した方が良い場合が多いと思います。

インタビュー時には、以下の3点に特に注意を要します。

 

  • 最終消費者向けの販売量を聞き出す必要がある。

企業によっては自社で最終消費者向けに製品を販売するのみならず、他企業へのOEM供給を行っている場合があります。この部分を除かないと、市場規模の数値として重複してカウントすることになってしまいます。

  • 国内市場向けの販売量を聞き出す必要がある。

市場規模は国ごとに推計することが多いと思いますが、その場合、企業の販売量のうち外国への輸出分を除いた国内市場向けの販売量を聞き出す必要があります。

  • 生産台数ではなく、販売台数を把握する必要がある。

こちらが販売台数を伺っても、メーカーの担当者が勘違いをして生産台数を回答してくる場合があります。市場規模を算出するためには販売台数を把握する必要がある点に注意を要します。

 

聞き出した販売量をそのまま鵜呑みにしてしまうのは危険です。以下のような観点での数値のチェックを実施し、数値の精度に疑念が生じた場合は、インタビュー回答者への確認を行う必要があります。

 

  • 販売量と販売単価を掛け合わせた値と、対象企業の売上高が近い値になるか。
  • 対象製品を輸入・販売している企業の販売量の合計値が、政府が公表する輸入統計の数値に近い値となっているか。

 

③. ①でリストアップされなかった中小・零細企業による販売量を推計する。

①で対象市場における全ての参入企業をリストアップできていれば、各社の販売量の合計値が対象市場の規模ということになりますが、中小・零細企業まで網羅的に全てリストアップすることは現実には難しいです。このため①でリストアップされていない中小・零細企業による販売量を推計する必要があります。推計するには、小売・流通企業に対して、①で作成した企業一覧にリストアップされていない企業による販売量がどの程度存在するかを確認する方法が有効です。

市場によっては、中小・零細企業による販売量が無視しても良い程に小さい場合もあるでしょう。そのような場合は、この部分の推計作業は割愛しても良いと思います。

 

④. ②および③で求めた各企業の販売量を合算して市場規模の推計値を求める。

読んで字のごとく、求めた企業ごとの販売台数の総合計を算出します。

 

⑤. ④で求めた市場規模の正確性を検証する。

上記のステップで求められた市場規模の推計値は、製品の供給側から得られた情報を積み上げて算出された値です。供給側にいる人間は、ともするとその販売実績を実際よりも大きく回答する場合が多いです。自社の姿を外部の人間に対して大きく見せたいという思いがあるためだと思われます。したがって、④までのステップで算出された市場規模の推計値を、製品の需要側の情報に照らし合わせることによりその精度を検証し、場合によっては数値の調整を行う必要があります。

具体的には、対象製品の消費者に対してサンプル調査を実施してみることが有効です。対象製品がB2C製品であれば、都市部や田園地域等、いくつかの地域に対して、そこに在住する個人に対してアンケートを実施し、対象製品を過去1年間にどの程度購入したかを確認し、その値から推計される市場規模と、④で算出された推計値がそれほど大きく違わないのであれば、推計は成功していると考えられます。対象製品がB2B製品であれば、業種や企業規模ごとに幾つかの企業をサンプリングしインタビューを実施して、対象製品の購入量を確認します。その情報を元に市場規模を需要サイドから推計し、④で求められた値と比較することになります。

 

■市場規模の求め方(サービス業の場合)

市場規模を求める対象の業種がサービス業の場合も、基本的なアプローチは製造業の場合と同じです。しかし、以下のような特徴があります。

  • 金額ベースの市場規模となる場合が一般的。
  • 製造業と比較すると参入が容易である場合が多い為、中小・零細企業が数多く市場に存在しているケースが多い。特にB2Cサービスの市場規模は、需要サイドからの検証の重要性が増す。
  • インターネットや電話等を経由して海外から提供されるサービスを除くと、原則として輸出・輸入の取引を考えなくてもよい。

市場規模の算出のみを目的とした市場調査プロジェクトは少ないです。精度の高い推計値は不要であったり、推計作業にかける予算に限りがあったりするのが一般的であると思います。上述のステップを全て実施するのではなく、不要と思われるステップは除いて作業を進めるのが現実的なアプローチであると思われます。

 

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投稿者:松下 哲夫

投稿日:2021年4月20日

[1] DUN & Bradstreet社等が提供している世界各国の企業情報のデータベースサービスを指します。